記憶の破片
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ココアが飲み終わった頃、大和さんが車で家まで送ってくれた。



「それにしても、沙江ちゃんも恋愛する年なんだね」



運転をしながらしみじみ呟く大和さんに意味もなく頬が染まる。



「隼人が気に食わないだろうな」



声を上げて笑う大和さんはお父さんの反応を楽しみにしてるみたい。



「あの、お父さんにはこのこと」



「はは、言わないって。言ったら総司の命が危ういからね」



大和さんの言葉にくすくすと一緒に笑った。



「珠子ちゃんもいつかこうなっちゃいますよ?」



ちょっと意地悪だったかな。


でも聞いてみたい。



「言うね、沙江ちゃん。まだ考えたくないな」



苦笑いを浮かべる大和さんは赤信号で停車をすると頭を抱えてしまった。



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