記憶の破片
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カップには両方ともホットミルクが入っていた。


夏なのに…。


でも、大和さんもお母さんも、私の心を落ち着かせるためにあったかいものを出してく
れてる。



「ねぇ、お母さん」



「うん?」



「お母さんは、土方さんとお父さん、どっちが好き…?」



言葉にしてから、こんな質問しちゃいけなかったのかもしれないと後悔した。


どっちなんて選べるものではないのは、私だってわかってるのに。



「難しい質問ね。どっちも、と言いたいところだけど…」



「違うの?」



「…初恋の人は歳さん。これは変わらないわ」



お母さんは少し遠くを見つめるように目を細める。



「歳さんと過ごした時間は短いものだったけれど、私はちゃんと歳さんを愛して、歳さんも私を愛してくれた」



「…じゃぁ、お父さんよりも土方さんが好き?」



お母さんは瞼を閉じて、首を静かに左右に振った。



「沙江には都合いいと思われちゃうかもしれないけど、隼人さんも愛してるの。私は、私と隼人さんとで今を生きていくと決めたの」



お母さんは真っ直ぐと私を見てくれた。



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