記憶の破片
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娘の前でも『愛してる』と堂々と言えるお母さんはかっこよくて。


自慢のお母さんだと再び痛感した。



「…土方さんよりも、お父さんの方が上ってこと?」



「ふふ、ほんのわずかにね」



「お母さん、私、今日、ひどいことしちゃった」



今日の私をお母さんに知られてなくて、視線は俯いてしまう。


知られたくないのに、聞いて欲しい。



「ふたりとも大事なのに、私がちゃんとしないから、ふたりとも傷つけた…」



ジワリと滲む涙を腕でゴシゴシ拭うを頭を優しく撫でられた。



「大丈夫。沙江は、自分で相手を傷つけたことに気づいてるから」



「…沖田さんが、好き」



「うん」



「でも…総さんも、好き」



「うん」



「…わかんない、よ」



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