記憶の破片
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私と沖田さんのこと?



「お前は、あの時をアイツと生きたかったのか?」



あの時は江戸末期のこと。


アイツは、沖田さんのこと。



「…そう、思ってました。…総さんを見つけるまで、ずっと」



病気でもなんでもいい。


ただ、大好きな沖田さんの傍にいたかった。



「…でも、今は違います」



バクバクと暴れる心臓が静まる方法ってないのかな。


あれば、もっと落ち着いて話せるのに。



「…私は総さんの隣にいたい。ずっと」



高校1年の小娘が生意気なことを言ってると思われるかもしれない。


ずっと、なんて口だけならいくらでも言える。


でも、今、口にした言葉は15歳の私の本当の気持ち。



「…もし、俺がアイツの生まれ変わりじゃなかったとしたら?」



総さんはこの質問をどんな気持ちで言ったの?


そう思いながら、脳裏に浮かぶ沖田さんの優しい笑顔。



「それでも、総さんがいい。…好き、だから」



「もし、俺が生まれ変わりじゃなかったら、“約束”を破ることになるんだぞ?」



約束を破ることはいけないとわかってる。



「はい、それでも一緒にいたいんです。…それに、沖田さんなら、許してくれます」



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