記憶の破片
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「総さんから見たら、私が子供だということはわかってます」



沖田さんからしてもきっと私は子供に見えていたんだろうな。


現代に戻る前の日だけは、対等になれた気がしたけど。



「大学でも、その先の職場でも、総さんには出会いがたくさんあるかもしれません」



きっと、いろんな人が総さんに恋をしてしまう。


こんなにかっこいい。


無愛想に見えて、優しい。


きっとみんな惹かれる。



「…でも、私は総さんが好きで、一緒にいたいんです」



もしかしたら、大和さんのように、前世とは関係のない人に総さんが惹かれてしまう日が来るかもしれない。



「……なぁ」



座った膝の上で拳を作りながら、私は総さんの呼びかけに顔を上げて総さんを見た。


耳はまだほんのり赤いけど、真剣な表情をしていた。



「はい?」



「…俺は口数少ない方だと思う」



ん?


いきなりどうしたんだろう。



「知ってますよ?」



そう答えると総さんは苦笑いした。



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