記憶の破片
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総さんはコクリとコーヒーを口に含んだ。



「『沙江さんを泣かさないでください』って」



「…っ」



ぽろっと零れた涙は流れ出したら止まらなくなった。



「泣くな。夢でどやされそうで怖いから」



小さく笑った総さんに私も思わず笑みが零れた。



「大丈夫です。今、泣かせたのは沖田さんですから」



そう言うと総さんは立ち上がって、私の隣に座りなおして、涙を親指で拭ってくれた。



「それはそれでなんか悔しい」



拗ねた表情をする総さんに胸がきゅんとなって、プッと噴出してしまった。



「へへ、今笑わせてくれたのは総さんですよ?」



「そうか」



総さんはすごく優しく笑っていた。



「大好き、総さん」



「…あぁ」



近づいてくる顔に瞼を閉じると、静かに唇が重なった。



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