君へのラブソング
彼女が泣いてた理由はなんなのか、そう思うのもつかの間。
「美奈!」
誰かを呼ぶ声に彼女は反応し、小さな声で「リク」と言った。
"リク"さんが"ミナ"さんを抱きしめたとき察したんだ。
喧嘩、してたんだって。
違うだなんて、赤の他人の俺には知る由もない。
でも、なぜか…
彼女の涙を拭ってやりたい。そう思った。
「ゆー。もしかしてあの子のこと好きになっちゃった?」
ニヤニヤ笑いながら父さんは言う。右手に開いた缶ビール。…酔ってるな。
「違うよ、父さん。」
ただの顔見知り、になるのかな?…ううん、彼女の記憶から俺は消えるだろう。
だから、恋なんて。
恋から逃げる俺に恋が出来るだろうか?