Turquoise Blue Ⅲ 〜好きな人の名前〜




一瞬、ものすごく焦った


でも平気だ
携帯かければいいし!




そう思って道の横


「う…ちょっ…すみません!!」


大きなビルの下の舗道
人割って、街路樹のとこに走る




濡れちゃうから
カサさして カバン ―――




「… カサ、ないや」




どうしよう


席に置いてきちゃった?


――… んじゃなくて


休憩する時も、持って移動してたし
いつまで持ってたか覚えてない


「………」




距離だけなら、駅まではすぐ


会場ではぐれたら
ゲートの入口で待ち合わせって
皆で話してはいたけど
道ではぐれたらの話はしてない


でも
いつもの場所に行けば
きっと皆、待っててくれてる


そう思うのに
なんでこんなに、また焦ってんだろ…


「―――… あ!」




携帯 カバンの中で震えてる
きっとマキちゃんだ!


でも


雨 降って来た頃
お土産入れてたビニール袋して
ギュッて縛ったからなかなか取れない


「もぉおおお…!」




「――― 葉山!!」




後ろから声


人の波 かきわけて来るのは




「――― む…武藤ぉおお!!!」




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