Turquoise Blue Ⅲ 〜好きな人の名前〜




なんか元気出たっていうか
ホッとしてうちらは笑って


楽屋に戻って
もらった差し入れを食べた


「うわっ!胃に染みるっっ!
お腹空いてたんだ〜私!」


「こっちサンドイッチだって」


「お母さん…
なんでこんな時まで漬け物?!」


「あはは!でも嬉しい!」


「や、山下くんの差し入れ!
”オリーヴ”のシュガーパンだ〜!」


「えっ!オリーヴって
学校の裏のパン屋でしょ?!」


「そうそう!懐い〜〜!!
安いのに量多くておいしいから
朝とか行列出来てたもん!」


「山下の家、学校の近くだっけ?」


「あ〜!だからか〜!」


「――― ヒカル?それは?」


「あ、ビデオ!」


「え!ライヴハウスでも撮ってくれてて…
後で渡してくれるよ?!」


「うん!わかってるぅ
… あ〜…やっぱあたし
ほとんど動けてないや」


「え…」


それはフロアの
一番後ろから撮った感じで
お客さんの頭がいっぱいと
ステージが全部映ってた




「ね?
マイクスタンド握ったまま
体、足でリズム取ってるだけだし…」


「でも、歌全然聞こえてるよ?!」


「でもビデオなのに
見てて、面白くないでしょ」




据え付けの、白い電話からコール




店長さんの、呼び出しだった




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