Turquoise Blue Ⅲ 〜好きな人の名前〜
「――― 新しいメロンソーダです!
お待たせいたしました〜!」
「こっ、こちらこそっ…!」
「お気になさらずに
ごゆっくりどうぞ〜」
「ありがとうね〜」
そう言って手をあげて
ステージでやるみたいに笑った
LEVEL1のヴォーカル
掃除を終えた店員さんもニコッと笑って
トントンと階段を降りてく
四人席のテーブルの上には
ケータイとハンバーガー
新しいドリンクと
… それになぜか、向かい側の席に
LEVEL1のヴォーカルも座ってて
アツアツのポテトを食べながら
私の顔を見て 笑ってる…
「あんたも奴らのファンなんだ」
「―――…」
なんでこのヒト
ここにいるんだろ…
「解散なんかしないだろ、ここは」
「―――… えっ」
突然立ち上がったヴォーカルは
”Chea-Ruu”の”グライドモデル”
「灰谷さあ
この部分かすれるじゃん
チョー好き〜」
サビの部分の鼻唄を歌いながら
ポテトのケチャップソースを追加した
「緑川も赤池も〜
若い頃から散々バンドやってて ―――
…こいつらお互い逃したら
もう代わりなんかいないって
この形にはならないって
もう嫌ってほど判ってるだろ」
「――――…」
「俺も昔はぁ
…俺さえいりゃ、他のメンバーなんて
どうでもいいだろって
マジで思ってたけど
今のバンドで違うんだなって
ちょっと解って来た」
「―――…」
なに当たり前のコト言ってんだろ…
「メール?
着信、出なくていいの?」
「――― え…」
「ほら
俺のケータイ、お前と同じ機種
ずっとツキっぱだからさ
青いランプ」
「―――…!!」