Turquoise Blue Ⅲ 〜好きな人の名前〜




「へ〜!
高校から、同じ奴らと組んでるのかぁ」


「……ですよ」




透明の傘を振って
私の前を歩く、LEVEL1のヴォーカル


黒いコートはレディースっぽい
青いデニムはブーツカットで
黒いブーツに、スソ入れてる




… あんなこと言われたら
ついて行くしかないし…


何か聞かれたら、答えるしかない…




「文化祭とかさぁ
盛り上がったんだろうな」


「… 特には」


「え
だって高校の文化祭だろ?!
軽音部とか言ったらあ
一番の晴れ舞台じゃね?」


「――― 部活じゃなくて
うちら四人だけの同好会だったし
それにもう、ライヴハウス出てたから…」




文化祭
音楽室の 開かない窓
演ったのはいつもの、第二教室




…お客さんは、来てくれた


喜んでくれたし、拍手もあった


でも、ライヴハウスの
あの張り詰めた空気とは
なんか全然違ってて―――


演奏後、何の緊張もしないで
ベースを置いた自分に気がついた…






「ふぅん、なるほどねえ」


「…そうゆうコトなら
自分のが文化祭とか
盛り上がったんじゃないんですか…」


「あ、俺 高校行ってないしぃ」


「――― え」




「だから知らないのよ
そういう盛り上がりみたいの
中学も〜殆ど行ってませんから」


「どうして…」


「”お砂糖で出来てる
カワイイオンナノコたち”が
期待するような諸事情は何もないよん」


「…………」


「睨むなって

―――… なんつの?
中学ん時にはもう
音楽で食ってくって、俺決めてて〜

だからさ、どうしても―――

プロにならないわけには行かないワケ」




「…………」




それっきり ―――


ヴォーカルはヘッドフォンして
何か、一生懸命に聞いてた


もしかしたら
曲とか覚えてるのかもしれない…






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