クローバークロニクル
「いつか、くるのは知っていたけど…早いな」


お父さんは目頭を指で押す


「環、後悔しない人生を送りなさい」


「…ありがとう、お父さん」


お父さんは私の顔を見ずに、そのまま寝室に入っていった









コンコン…



海里が部屋にやってくる


「よう…」


「おす」


や、やばい…さっき盗み聞きしてしまったことを今思い出した


「…あーあ、明日から俺、ニートなんだけど、どうしようかな。内職でもするかな」


なんてのんきな声で話している


「なんてな。実は今度家族で旅行に行くことになったんだ」


「ホント?」


「ああ、予約取れ次第、ちょっと行ってくる」


「そっか…、良かったね」


「はは、親父のやつ、ビデオカメラ買うとか言い出して…」


笑っていた海里が、真顔になった


「仕事辞めるとか言い出してさ…、どうしていいのかわかんねーな…」


「海里…」


「確かにずっと一緒にいれるかもしれないけど…」


「旅行に行ってから、考えればいいじゃない?」


「そ…だな」


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