好機逸すべからず!!
大きな溜息を落とした大村はまだ言葉を続け、その言葉は俺をどん底に突き落とすには十分なものだった。

『無かった事にしたい…。』

聞こえるか聞こえないかのそんな小さな声だったが、俺の耳には確かに届き目の前を暗くさせる。

俺は意を決し、震える手にぐっと力を込めドアを開けた。
一番に目に入ったのは当たり前の様に大村で、黒いシーツに身を包んだその姿に胸が早鐘を撞くように高鳴る。

「おはよう。」

震えない様にと力を入れて発した俺は、その声が思いの他感情がなくて自分でも驚いた。




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