好機逸すべからず!!
「何処に忘れてました?」

にっこりと微笑む彼女は、少し頬を赤くして柳に訊ねた。
そんな彼女を見つめ返す柳の眼差しがいつになく柔らかくて、その事実に俺は声を出す事も出来ずに二人を交互に見つめていた。

「洗面所に忘れてた。」

「すみませんでした。」

少し照れた様な表情を浮かべる彼女の掌に、そっと腕時計を渡した柳は
「いえいえ。どう致しまして。」
珍しく笑顔を見せる。

「ありがとうございました。」

もう一度柳に礼を言った彼女は「じゃあ、先に行きますね。」と言い立ち去った。



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