好機逸すべからず!!
「で?話って何?」

ローテーブルの上には数本の缶ビール。
そのうちの一本を手に取り、俺は口を開いた。

「………」

ローテーブルを挟んで前に座っている大村は、話し難いのか口篭りはっきりとしない態度だった。

忙しなく目線を動かし落ち着かない様子の大村に、俺は眉間を寄せる。
今更何の話があると言うのだろうか。
あの時、無かった事にしてと言ったのは大村なのに。
既に、無かった事になってしまった今、俺たちが話す事なんて何も無かった。

話があると言われ、若干浮ついていた俺の気持ちは次第に落ち着きを取り戻す。

自分の良いように捉えて傷つくのは嫌だ。
自己防衛の為に、俺は希望を持つような考えを捨てる事にした。

「あのさ…この前の事なんだけど……。」

何かを決意する様に、グイッとビールを飲んだ大村が言った。



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