―不可能な共存―
「出るんじゃないの?」


「出る訳ねぇだろ。何しに来たと思ってんだよ。あ、ほら見ろ」



南條はあごでテツの方をさした。



テツもバーテンも他の仲間達も、少女と南條の姿を探しているようだ。



2人はしばらく様子を見ていた。



すると、テツ達は少女達が店を出たと思い込んだようで、また楽しそうに騒ぎ出した。



バーテンもカウンターに戻っていった。



「これからどうすんの?」



少女は不安そうにたずねる。



「もうちょっと見張る」



南條はテツから一瞬も目を離さずに言った。



少女も素直に従った。



「たぶん、そろそろ動き出す」

「どういう事?」


「あいつら、薬の売買いつもこの店のトイレでするらしい。決まった時間にな」


「調べたの?!」



南條はニヤリと笑っただけで何も言わなかった。



少女は、南條には教師よりも合った仕事があるような気がした。



「あと5分」



時計を見ると、午後11時55分だった。



「ちょっと動くぞ」



南條は少女にギリギリ聞こえる声でそう言うと、また少女の手を引き、今度はトイレの個室に入った。
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