―不可能な共存―
テツは何度も頷いた。



怯えている。



南條の扮装は効果抜群のようだ。



「今、薬買ったのか?」



テツはまた何度も頷く。



意外に正直なようだ。



もしくは、ただの小心者。



「誰から?」



どこにしまってあったのか、南條はテツに紙とペンを差し出した。



用意周到。



「さっさと書け」



どうやら南條はテツの首を軽くしめているようだ。



テツは震える手で紙とペンを受け取り、答えを書き始めた。



「ウソ書いたら殺すから」



南條はテツの耳元で優しくつぶやいた。



少女はその様子をずっと個室の中から見ている。



南條から、出てくるなという指示があったわけではないが、出ていってはいけない事はなんとなくわかっていたから。
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