―不可能な共存―
どうやらただの客のようだったが、少女は音がしないようにさっと個室のドアをしめた。



南條はテツの口を塞いだままうしろから抱き締め、顔をさらに寄せた。



今までの流れを知らない人間が南條とテツのこの体勢を見たら、確実に誤解し、そして納得するだろう。



ここはそういう店なんだ、珍しくはない、と。



南條の機転のよさに少女はまた驚かされた。



今トイレに入ってきた客は、テツと南條をチラリと見ただけで特に何の疑いも持っていないようだ。



1分もしないうちにただの客は用を済ませ、トイレから出て行った。



それを見届けた南條は、テツから少し体を離し、ただの客が入ってくる前の体勢に戻した。
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