―不可能な共存―
病院に着くと、すぐにコウスケはストレッチャーに乗せられ、手術室に運ばれた。



一度止まった心臓は動いたけれど、まだ安心は出来ない。



あたしたちはまた祈った。



待合室のイスに座っていても、あたしもユウリも言葉を発しなかった。



ただしっかりと手をつないでいた。









そのままどんどん時間がたち、8時間後。



手術室の自動ドアが開いた。



そこから緑色の手術着を身にまとった医者と看護士が出てくる。



「つきそいの方ですか?」


「はい…」



医者はマスクを外し、ニッコリと笑った。



「もう大丈夫ですよ」



医者の心のこもった言葉に心底安心した。



「ありがとう…ございます…」


「彼の命を救ったのは私じゃなく、あなたですよ」


「え…?」


「あなたの心臓マッサージがなかったら助からなかったかもしれない。あなたの彼を助けたいという気持ちが彼を救ったんです」



医者はそう言って、病院の長い廊下を歩き始めた。
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