―不可能な共存―
「うん、元気。父さんは?」



優しい声になっているのが自分でもハッキリとわかる。



「元気だよ。キョウカもな。お前さぁ、たまにはこっち帰ってこいよ。父さん寂しい」


「気持ちわりぃよ。


まぁそのうち帰るから。
近いしね。


それより、キョウカとケンカすんじゃねぇぞ。


どうせ父さんが負けるんだから」



電話越しに父親の笑い声が聞こえた。



「俺はお前にもキョウカにも勝てねぇからな。じゃぁ、また電話するから。気つけて学校行けよ」


「わかってるよ。じゃあ」



あたしはゆっくりと二つ折り携帯を閉じた。



父親との会話に出演していた『キョウカ』とは我が母である。



小さい頃から母は、あたしに『ママ』とか『お母さん』とは呼ばせなかった。



意味はわからないが、なんだか友達みたいでけっこう気に入っている。



朝から父さんの声が聞けて急に元気が出て来た。



親父パワーはいろんな意味ですげぇな。
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