全てがキミだった
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「罰ゲームだからな」
 

クラスメートが足早に帰っていく放課後の教室で、公平は真顔でそう言った。
 

顔の半分は窓から差し込む夕日に染められていて、元々堀が深い顔立ちが余計深く見えたのを今でも覚えている。


「髪を切るったって、わたしじゃ無理だよ。美容室行きなって」


「バーカ、学生は何かと貧乏なんだよ。そんな俺が美容室に行けると思うか?」
 

意味深に笑う公平に、わたしは反論出来なかった。


出来るわけがない。


だって、公平のその表情が好きだったのだから。
 

公平は、何かと理由をつけては、わたしの傍にいようとしていた。
 



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