全てがキミだった


ベースを踏んで一周走り切った公平が、得意げな表情でわたしの座るベンチへやって来た。



「暑い?」

「少しね」

「このベンチの近くに大きな木でも植えればよかったのにな。それか、屋根を付けるか」

「そだね」

「なんだなんだ。ちょっと不機嫌?」


わたしの隣にドカッと座った公平は、ムスっとするわたしの横顔を覗き込んできた。


「え……ちょ、待って。
なんで怒ってんの?
俺、なんかした?」


珍しく焦る公平が、わたしの機嫌を取るように上目使いになる。


――バカ。

この卑怯者。


上目使いは女の子の特権なんだ。


男がそんな仕草したって、


したって――…




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