全てがキミだった
「みんなに、一人一個ずつ持参って言ってあるんだ。だから何の問題もないよ。俺のは、まだ家にあるし」
「……でも」
わたしの手の中に収まるボールは、真っ黒に汚れていて、微かに土の匂いがした。
「そのボール、よく見てみて」
公平の人差し指がボールに向いて、わたしは目をこらしてボールを眺めた。
ひどく汚れているボールは、長い間使われてきたんだろう。
子供達や公平と、共に成長しながら。
思い出がたくさん詰まっているんだろうな。
なんて事を思わせる、どこか懐かしい匂いがした。