全てがキミだった


「みんなに、一人一個ずつ持参って言ってあるんだ。だから何の問題もないよ。俺のは、まだ家にあるし」


「……でも」


わたしの手の中に収まるボールは、真っ黒に汚れていて、微かに土の匂いがした。


「そのボール、よく見てみて」


公平の人差し指がボールに向いて、わたしは目をこらしてボールを眺めた。


ひどく汚れているボールは、長い間使われてきたんだろう。


子供達や公平と、共に成長しながら。


思い出がたくさん詰まっているんだろうな。


なんて事を思わせる、どこか懐かしい匂いがした。




< 105 / 186 >

この作品をシェア

pagetop