全てがキミだった
「池内、早くこっち来ないともう一発投げるからなっ!!!」
そう言って、水風船をかまえる。
わたしは、足についた泥を振り払ってから、公平の元へと急いだ。
「どうしたんだよ、さっきからさえない面ばっかして」
わたしは無言で視線を落とす。
公平が原因だよ、なんて、言えなかった。
言えたら、どんなに楽だろう。
「はい、これおまえの」
手に持たされた水風船。
程よい重さが、あの頃のわたし達の姿を思い浮かばせた。
――体育祭。
再び、あのボールを渡された行事。
公平が、ミサキを追う準備を、着々と進めていた。