全てがキミだった
この前、あの公園で公平に押し付けた真っ黒なボール。
ミサキの印しの付いた、思い出の詰まったボール。
あれほどいらないと言ったのに、それでも公平はわたしにそれを渡したがる。
わたしは、あかさまに公平から視線を逸らした。
「これさ、マジで池内に持ってて欲しいんだ」
公平は優しくボールを撫でていた。
それが、わたしにはミサキを撫でているように見えてしかたなかった。
「どうして?」
「………」
「どうして、わたしなの?」
こんな事、聞くべきことではないと思う。
きっと理由なんてないのだから。