全てがキミだった
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「綾姉帰ってくるの?」
 

お母さん特製の野菜炒めをつつきながら、梓が顔を明るめる。


特製といっても、ただの炒めものなのだけれど。
 


梓は、小学五年生。


友達は女の子より男の子のほうが多い。


とにかく、やんちゃだ。
 

わたし達三姉妹はかなり年が離れている。
 

綾とは三歳差、梓とは十二も離れている。
 

おかげで、わたしと梓が街を歩けば親子に見られる事もしばしばだった。
 

そしてこれまためんどくさい事に、わたし達姉妹は名前が『あ』で始まる。
 

亜美・綾・梓。
 

これは、お父さんの『三人のイニシャルを同じにしたい』という一言からつけられたみたいなのだ。


『A・I』
 

そして、そんな簡単な一言で名前を付けたもんだから、必ず私たちを呼ぶときに名前を間違える。
 

例えば、わたしの名前を呼ぶのに

『梓、綾、あ……』
 


――亜美ですけど。




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