全てがキミだった
ホワイトボードの文字を完全に無視してドアを開けると、机に座って何かを書いていた梓が、咄嗟に“何か”を隠した。
そして、ギロリとわたしを睨みつける。
「マジ最低。
亜美、字読めないわけ?
なに勝手に入ってきてんの?」
発想は小学生でも、梓の口から出てきた言葉は女子高生のような口調だった。
それも無理はない。
一番言葉を覚える2、3歳の頃に、わたしがこんな言葉遣いをしていたのだから。
梓は、わたしを見て育っている。
これは、わたしが悪い。
「あ、ごめん。てか何してんの?」
「別に?」
梓は素っ気なく言って、咄嗟に隠した“何か”をまた引っ張り出していた。