全てがキミだった


「綾姉、お土産買ってくるかな」

「あの子の場合、手ぶらじゃ帰ってこないでしょうね。
そういうところはしっかりしてるから」
 

何かなー、と、お土産話で盛り上がる二人に触れることなく、わたしは目の前の野菜炒めにがっついた。


こういう話しをする時は、なぜか自分の居場所はないように思えてしまうからだ。
 

池内家の父、義久は、長距離トラックに乗っているため平日は帰ってこない。


金曜日の夜中に帰って来て、また月曜日の朝早くに家を出ていく。
 

だから、ほとんどお父さんとは顔を合わさないのだ。


まぁ、お父さんがいない方が静かで過ごしやすい。


こんなことお父さんに言ったら相当へこむんだろうけど。
 

お母さんも、平日の夜はどこかすっきりした顔をしている。


『亭主は元気で留守がいい』
 

しみじみとホントにそうだわ、と呟いていた。




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