全てがキミだった
「梓も、綾姉みたいに夢を持った人間になりたいな。絶対亜美みたいに暇な人生歩むのは嫌だ」
なんとでも言えよ。
わたしは綾じゃないんだから。
「お母さん、梓パティシエになりたいの」
「なりたいものになりなさい。
綾もそうやって夢を叶えたんだから」
身を乗り出す梓に対して、お母さんは涼しい顔してそう言った。
夢――。
そんなの。
「夢なんてね、追うだけ自分が苦労するだけだよ。
休みたいときに休めないし、人が休みのときにせっせと働かないといけないし。絶対大変だって」
わたしは、誰とも目を合わさずに言った。
絶対そんな人生つまんない。
また梓がそう呟いた。