全てがキミだった
「なに?どうしたの?」
「綾が、綾に……」
お母さんの手が小刻みに震えている。
目をこれでもかってくらいに丸めて。
わたしは眉をひそめて、綾からの手紙を覗き込んで見た。
“今度の連休、また帰ってくるから。
お母さん、ちゃんと休み入れててね。
会わせたい人がいるから”
とうとう、綾も動き始めた。
お母さんは相当驚いたのだろう。
まだ、放心している。
それほどショックだったのか。
「お母さん、今時誰だった恋愛の一つや二つするでしょ?そんなに驚かなくったって」
わたしは、お母さんの事を心配してフォローしたつもりだった。
だけど、お母さんのこのリアクションは、ショックからのものではなかったみたいだ。