全てがキミだった
一番好きになった人が一番身近な人を好きだったなんて……辛くなかったのだろうか。
「辛かったわよ。もちろん。今のあんたと一緒よ」
「……なんだ、気づいてたんだ」
「見くびらないでくれる?あんたの母親を何年してると思ってるのよ」
わたしは肩をすぼめた。
わらび餅に爪楊枝を刺して、お茶をすする。
ズビビと音を立てると、お母さんが眉をひそめてわたしを睨んできた。
「時間が解決するのよ。
そういう事って」
そう言って、お母さんもお茶をすする。
ズビビと音を立てて。
「熱いわね」
飲んだ後にふーふーと息をかけ熱気を取っていた。
時間が解決する。
わたしの時間とやらはいつ来るのだろうか。
もう、六年も経つというのに。
わたしの中の公平はまだ居座っている。
あの頃のように、下あごの辺りをピクピクさせて微笑みながら、『おまえはドジだな』と声を掛けてくる。