全てがキミだった
第3章
「……池内?」
それは、不意に話しかけられた声。
コンビニのレジで、「いらっしゃいませ」と声を出した瞬間だった。
レシートと共におつりを目の前の男性に渡した時、その目の前の男性がわたしの名前を呼んだ。
驚いたわたしは、微かに触れ合う手を素早く引っ込めた。
声に、聞き覚えがあった。
心臓が限界まで高鳴る。
接客業だというのに、相手の目を見ることが出来ない。
顔も引き攣っていると思う。
「やっぱり、池内だ」
目を伏せ続けていると、目の前の男性の声のトーンが上がった。
――どうして、ここにいるの?
わたしの目は、細かく痙攣しながら泳ぎまくる。
「久しぶりだなっ」
わたしは引き攣った笑顔を浮かべ、軽く頷いてみせた。
突然、なんの前触れもなく、わたしの目の前に現れた公平に向かって。