全てがキミだった
「池内っ」
着替えを済ませ外に出ると、駐車場に公平の姿があった。
肩にかける鞄をギュッと握り、一瞬目を伏せる。
変に緊張する。
嬉しいはずなのに、わたしの足は地面から少しも上がらなかった。
「今から用事ないだろ?なにも」
そう言って、公平は遠慮がちに微笑んだ。
コクンと頷くと、
「やっぱりな。
ちょっと付き合えよ。久しぶりに語ろうぜ」
公平は、あたしの返事を聞かずに歩いて行く。
あの頃もそうだった。
わたしに有無を言わせず、ただ微笑む。
わたしを黙らせる方法を、公平は知っていた。