全てがキミだった
「あんたとは違うのよ。
みんなに会いたいでしょうに」
「そうかね。わたしだったら家でゴロゴロしとくけどな」
うちの次女は、美容師の夢を叶えて家を出た。
ここから新幹線で約二時間のところに就職して、何かある度に電話だの手紙だのとこまめに送ってきた。
それが届く度にお母さんは冷蔵庫に手紙を張って、たまに眺めたりしている。
「お母さん、ついでに髪切ってもらおうかしら」
と、お母さんが言った瞬間に、ジューっと食欲をそそる油の音が、わたしのお腹をグーっと慣らした。