全てがキミだった
「そう言えば、どうして急にこっちに戻ってきたの?」
あからさまに話題を変える。
少しでも空気を変えようと思って。
だけど、それが間違っていた。
雰囲気でそれがわかった。
「あぁ……ちょっとな」
今度は、公平の目が泳ぎ始めた。
気まずい表情の裏側には、きっと『ミサキ』がいるんだろうなと、感覚でわかった。
だけど、
公平は、一切美咲の事は口にしなかった。
まだ付き合っているのか……
そう、聞く事が出来なかった。
そもそも、公平は美咲と付き合う事が出来たのだろうか。
高校を卒業し、香織と離れ離れになってからは、わたしの耳に公平の情報を入れる人はいなくなった。
高校を卒業してからの公平の事は、わたしは何も知らない――。
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