感方恋薬-知られざる月の館-
「おーい、戻ってこーい」


則子があたしの目の前で、ひらひらと手を振って見せた。


「何、占いで舞い上がってるのよ?」


あたしは則子の声で現実の世界に舞い戻って来た。


「その顔から察するに、結果は良かったんだな?」


「う、い、いやまぁなんと言うかカンと言うか…」


あたしは照れ隠しに後頭部を、ぽりぽり掻いて見せた。


「ったく分かりやすい奴だなぁ。でも、自分で自分の事を占った結果ってアテてにならないんでしょう?下手すると呪われるとか言う話を聞いたこと有るけど」

…う…そうだった。


これはひょっとしたら、何かのたたりの可能性だって有るんだ。油断しちゃいけなかった。あたしはそう思い直すと、右手を強く握り締め瞳を硬く閉じると、浮足立った自分に深く反省するのであった。
< 126 / 219 >

この作品をシェア

pagetop