感方恋薬-知られざる月の館-
飛び込んで来たのは幸だった。


これもお約束と言う事でご容赦願いたい。


「さ、さっきの悪霊は、僕が、僕が必ず退治して見せますからね。絶対、絶対です」


幸はあたしを見詰め滂沱の涙を流しながらあたしに向かって叫んだ。


そして、それだけを言い残すとくるりと背を向け、あたしの前から全力で駆け出し、姿を消した。


幸…何となく罪悪感があたしの胸の中に湧き出し始めた。


あたしは悪い女なのだろうか?幸の気持は、自分でも分かって居た筈だ。


しかし、今回悪いのは若様だ。公衆の面前で、あんな事するから…


と、何でも人の性にしてしまう。あたしは悪い女なのだろうか。
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