感方恋薬-知られざる月の館-

体育館の裏には良く日のあたる芝生が有って、ここは校内デートのメッカとなって居る。


悔しいけれど、あたしが顔を出した時にも何組かの男女が芝生に座って何事かを囁いている様だった。うん、ほのぼのムードで羨ましいぞ。


あたしは芝生のほぼ中央付近でもう一度周りをぐるりと見渡した。しかし、宗一郎の姿を見つける事は出来なかった。


「く、たばかられたか…」


実はちょっと期待してたんだが、やっぱりそんなうまく行く訳無いもんな。


あたしは端っこの茂みに潜んだ、幸と紀美代にちょっと肩をすくめてみせた。


「幸、帰ろう、やっぱ無理―――」


そこまで言った処で、あたしは背後から肩をとんとんと叩かれる感触に思わず振り返った。


「あ!」


宗一郎だった。きさま、何時の間に現れた。ひょっとして伊賀者か?
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