感方恋薬-知られざる月の館-
「貴子殿、私です、そう怯えないで下され」

化けて出た奴は、あたしを名指しで指名した。


いやいや、遠慮しとくぞ、こんなご指名は。


そうだ、則子、則子に憑り付けば良いんだ。


あいつもあたしと、おんなじ体験をしてみれば、あたしの苦労も、ホントの意味で分かち合えるって物だろう。


そうだ、それで良いんだ、わーっはっはっ


「い、いかん、理性を飛ばしてしまっては負けじゃ」


あたしは、現れた相手を認めつつも理性を失わない様に、必死で精神統一に励んだ。
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