感方恋薬-知られざる月の館-
そこには極彩色の玉座と、そこに座る、爺の姿…


「おお、よう来たな貴子よ」


爺は玉座の脇に美女を侍らせてあたしに向かって、これ以上は無い位に軽いノリで話しかけた。


あたしは変な意味で目から鱗が落ちた様な気がして、あっけにとられた表情で爺を見詰めた。


そして力無く、その場にへたり込んだのだった…


         ★


なんだか寝汗が凄かった。


雀がちゅんちゅんと泣きながらあたしの部屋の窓でさえずっているのが聞えては居たが、爽やかな朝の風景とはかなり遠いシチュエーションだった。

「はぇ…」
< 34 / 219 >

この作品をシェア

pagetop