感方恋薬-知られざる月の館-
昨晩寝たのか寝てないのかよく分からない体験をしてしまったのが原因とはいえこれは非常につらい状態だった。


         ★


休み時間。予習する時間を惜しんであたしは机につっぷしてぐうぐう寝こける体制に入っていたのだが、


「貴子さん、貴子さん」


えーいうるさい、あたしゃ眠いんだ。そう思って無視を決め込もうとしたんだが、


「貴子さん…貴子さんてば…」


あまりにしつこい呼び掛けにあたしは、しぶしぶ机からむっくりと顔をあげた。


おそらく、枕にしていた腕の制服の襟の痕が、くっきりと、おでこについている事だろう。
< 37 / 219 >

この作品をシェア

pagetop