感方恋薬-知られざる月の館-
いつもの、にこにこ笑いを張り付けて、幸はスペアの幽霊探知機を差し出した。


あたしは床にがっくりと膝を落として、燃え尽きたボクサーの様に床を見詰めたまま、動けなくなってしまった。


         ★


放課後、あたしは再び幸の実験台にされるために、教室に拉致されて居た。


則子は「じゃぁがんばってね」と言ってひらひらと手を振りながら、にこやかに教室から出て行った。


幸と紀美代は意外とコンビネーションが良く、あたしが抵抗する間も無く、あれよあれよという間に、教室に残してしまったのだ。


悪徳美術商もまっつあおだ。


「じゃぁ始めますね。痛かったら右手を上げて合図して下さいね」


と、幸は言うが、あたしが手を上げた処で、どうせ、あぁ、痛いですかとか言いながら無視するつもりだろう。手の内は見えてるぞ、幸…
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