感方恋薬-知られざる月の館-
あたしは、額に張られたケーブルを全て引っ剥がすと「幸、今見た事は絶対に秘密だからね!」と、激しい口調で釘を刺す。


幸は私を見詰めると、その後にやりと不敵に笑い


「勿論ですとも、こんな事、誰に言っても信じて貰える訳有りませんからね、当然秘密にしています」


幸はそう、答えた――のだが


あたしには、幸の言葉がにわかには信じられなかった。


だって、自分が開発した機械が、まがりなりにも期待した効果を発揮し今迄誰も覗いた事の無い、精神世界を人工的に作られた力で初めてのぞき見る事に成功したのだ。


その方法や原理をちゃんと論文に書いて実験成果を学会にでも発表すれば、『人間はどこから来てどこに行くのか』なんていう人間の最大の疑問点に答えることすら可能となる劇的な論文となるでは無いか。


が、がだ…これははっきり言って危ない。
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