感方恋薬-知られざる月の館-
幸、人の話はちゃんと聞け。あたしは、すっぱりと断ったぞ。なのになんで答えが部室で待ってますなんだ?


「幸、ちょっと待て、あたしは…」


と、幸を呼び止めようとしたが、奴は全く聞く耳持たずに自分の席に座ると楽しそうに鼻歌交じりで鞄の中をごそごそとひっかきまわし、何に使うのか分からない機械をずるずる引っ張り出すと、おもちゃを貰った子供の様な表情で、それをぐりぐりと弄り回し始めた。



『爆発しないだろうな』と言うのが、あたしの正直な見解であるが、幸は構う事無くそいつを弄り回す。そして、よく見ると、幸の周りに少し人だかりの空間が開いている様に見えた。


うん、どうやら考える事は、皆同じらしい。


「貴子、あんた幸に科学部の良き研究対象って思われてるぞ」


則子があたしの後ろで、ぼそっと呟く。確かにそうだ。幸はあたしを科学部改めオカルト研究会に引っ張り込む計画に違いない。あたしは、横暴に屈しないぞ。授業が終わったら絶対真っ直ぐ帰ってやるからな。
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