感方恋薬-知られざる月の館-
そう思いながらあたしはメモ用紙を枕元に放り出すと、つい、うつらうつらとうたた寝をしてしまった。

         ★

「おお、どうじゃ貴子よ、あの巻物の内容は分かったかの?」


爺が玉座に座って妙に軽いノリであたしに訪ねる。言葉は耳に入って来るのだが、あたしの視線は、玉座の横に控える、若様の方に釘付けだった。


「…あ、う、うん、大体わかった」


いかんいかん若様に、思わず見とれてしまった。


あんまり若さまばっかりにエコひいきすると、又、爺がスネてしまう。


「そうかそうか。じゃぁ、そういう事じゃて」


おいおい、爺よ、そう言う事って、どういう事だよ。


あたしと同じ名前の先祖が誰ぞに向かって宛てた手紙だろ?それがあたしの将来と、どういう関係が有るんだ?
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