感方恋薬-知られざる月の館-
「なに、秘密を作ろうとしてるんだ、え~い言え、言わないか!」


と、爺の着物の襟を、思っきり掴み上げて怒涛の寄りを見せた。


「こ、これ、貴子、年寄りに何をするんじゃ」


「都合の良い時だけ年寄りに成るんじゃない」


「都合が良かろうがが悪かろうが、わしは何時でも年寄りじゃ!」


爺の懇願は自動的に却下された。


あたしは容赦する事無く爺の襟首を、ぐいぐいと締め付ける。


「え~い、言え、言わないか―――」

         ★

ぱかん…という感じで目が覚めた。あたしの目の前には、見なれた天井の模様が、ぼんやりと映った。
< 83 / 219 >

この作品をシェア

pagetop