夏色の恋【完】
「本当にありがとう…」


いつも私を気遣ってくれる長谷川さん……。


けど、今はその優しさに心が痛かった。



「それからこれ、麻衣ちゃんに…」


そう言いながら、またリボンのかかった箱を取り出した。


「ネックレスなんだけど…。麻衣ちゃん、どのブランドが好きかわからなくてさ…」


長谷川さんは少し困ったような表情を浮かべた。


「ありがとう…。麻衣、きっと喜ぶよ……」


そんな長谷川さんに、私は笑顔でお礼を言った。



「里緒菜が元気そうでよかった」


長谷川さんはまた私の頭を撫でる。


そしてチラッと自分の腕時計を見ると、


「ごめん…。今日はあんまり時間なくて…」


申し訳なさそうに私を見た。
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