夏色の恋【完】
「ううん…、大丈夫だよ」

「ごめんな…。仕事が溜まってて…。しばらくゆっくり会えないかも…」


時間が空いたら少しでも寄るようにするから…、と言い残して長谷川は帰って行った。




1人になった私はテレビをつけた。


そして貰った腕時計を見て、なんだか寂しくなった。



こんな高い物が欲しい訳じゃない……。


嬉しいけど、本当に欲しいのは“物”じゃないのに……。



長谷川さんはいつだって欲しい“物”をプレゼントしてくれる。


そして優しさも私にくれる。



私のことを大事にしてくれるし、正直不満なんて何もない。



けど、私は気づいてしまった……。


長谷川さんといる時の私は本当の自分じゃない。


言いたいことも言えないでいるし、心の底から笑っていない。
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