夏色の恋【完】
そこにいたのは麻衣じゃなく、北斗だった。



私の大好きな北斗……。



止まっていた涙がまた溢れ出した。



「また泣いてんのかよ」


そんな私に呆れたように言う北斗。



どうしているの?とか、何しに来たの?とか、聞きたいことはあったけど、今はそんなことどうでもいいと思った。



伝えなきゃいけない。


後悔しないように言わなきゃ……。




泣いたまま突っ立っている私に、


「貞子、卒業したんだ…」


北斗はそう言って、「似合ってんじゃん」と私の髪を触って少し笑った。



一緒に過ごした時と、何も変わっていない北斗の笑顔。
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