夏色の恋【完】
「お姉さん、おもしろいね」

「里緒菜だけど」


笑いながら私を見る北斗にそう言うと、


「それってホントの名前?」


と、真剣な顔をして言われた。




“里緒菜”は源氏名だった。



麻衣も、長谷川さんでさえも私の本当の名前を知らない。


長谷川さんには一度聞かれたけれど、『そう呼んでくれたらいい』と私は言った。



18歳の時にキャバクラで働きだしてから、私の名前は“里緒菜”になった。


特に思い入れがある名前じゃない。


店長が適当につけた名前。


それ以来、私のことを本当の名前で呼ぶ人なんていない。
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